2次試験で求められる能力とは何か?(2/4)

2次試験で求められる能力とは何か?(1/4)」の記事の続編です。今回は、前回明らかにした

2次試験で求められている能力=養成課程の経営診断Ⅰで身に付ける能力

という前提の下、その能力とは何かについて、見ていきたいと思います。

中小企業診断士に求められる基本能力

前記事にて紹介した、中小企業庁の「登録養成課程を実施するためのカリキュラム等の標準モデル」の第1章「Ⅰ.標準カリキュラム」を見てみると、「中小企業診断士に求められる基本能力」として以下のような図が示されています。

中小企業診断士として必要な能力の体系図
(中小企業庁「登録養成課程を実施するためのカリキュラム等の標準モデル」を基に作成)

これを見てみると、「なぜ2次試験が現在の形式であるか」の理由が分かります。

事例文章を「傾聴する」ように素直に読んで、「現場の特性を踏まえた現場評価」をしながら正確に「現状を把握」し、中に書いてある重要な情報を「分析」、「統合」的に思考し、事例企業がどのような対策を取ればよいのか「構想」して、それを「論理的」かつ「影響力」のある言葉で答案で「プレゼンテーション」を行う、その能力を問う試験が、2次試験なのです。

こうしてみると、必要な能力をブレイクダウンすることによって作られた試験だということがよく分かりますね。非常によく考えられて作られているのだな、と実感します。

各事例で求められる能力

次に、各事例で求められる能力です。これは、イコール「養成課程の演習のねらい」ですね。再び中小企業庁の「登録養成課程を実施するためのカリキュラム等の標準モデル」の第1章「Ⅰ.標準カリキュラム」を見てみると、各演習について以下のように書いてあります。

  • [各事例共通]経営戦略
    • 経営戦略・経営計画の策定について、また策定した経営計画を実行するためのマネジメントについて、的確な指導・支援・アドバイスできる技能
  • [各事例共通]助言能力
    • 企業の問題発見・問題解決プロセスに参加し、信頼感を獲得したうえで、的確な指導・援助・アドバイスができる技能
  • [事例Ⅰ]人材マネジメント
    • 人と組織に関する問題を発見し、その具体的方策について、的確な指導・援助・アドバイスができる技能
  • [事例Ⅱ]マーケティング・営業マネジメント
    • マーケティング戦略の立案、また立案したマーケティング戦略を実現するための販売・営業マネジメントについて、的確な指導・支援・アドバイスできる技能
  • [事例Ⅱ]店舗・施設マネジメント
    • 店舗コンセプトを策定し、それに基づいた店舗レイアウト等のプランを策定することにより、店舗施設について、的確な指導・援助・アドバイスができる技能
  • [事例Ⅲ]生産マネジメント
    • 生産マネジメントに関する問題を発見し、またその問題解決の方向性について、的確な指導・援助・アドバイスができる技能
  • [事例Ⅲ]情報化
    • 経営課題を解決するための情報化課題を発見し、その解決策の具体的方策について、的確な指導・援助・アドバイスができる技能
  • [事例Ⅳ]財務・会計
    • 財務状況を評価し、財務分析により抽出された課題の解決について、的確な指導・援助・アドバイスができる技能

「何となく、各事例確かにそんな感じかも」とは思うものの、これだけではまだ抽象的なので、さらにその中身として学習する内容を見てみます。同資料「Ⅰ.標準カリキュラム」から演習内容を整理してみると、次のようになります。

  • [各事例共通]経営戦略
    • 経営戦略立案プロセス
    • 中長期経営計画立案プロセス
    • 戦略を実行する上で必要となるマネジメント(計数管理、進捗管理、リスク管理)
  • [各事例共通]助言能力
    • コンサルタントの思考法・技法
    • インタビュースキル・プレゼンテーションスキル
    • コンサルティングプロセス・経営コンサルタントとしてのプロフェッショナリズム
  • [事例Ⅰ]人材マネジメント
    • 組織の検証と戦略推進のための人材マネジメントシステムの再編・再構築の考え方
    • 人と組織の問題の特質を理解して人材マネジメントシステムを再構築する考え方
  •  [事例Ⅱ]マーケティング・営業マネジメント
    • マーケティング戦略策定の基本プロセス
    • マーケティング戦略に即した営業マネジメントの進め方
    • マーケティング戦略策定における製品開発プロセス
    • ロジスティクス戦略
  • [事例Ⅱ]店舗・施設マネジメント
    • 店舗コンセプトに基づいた店舗レイアウト等の作成
    • 投資採算性も含めたリニューアルプランの策定
  • [事例Ⅲ]生産マネジメント
    • 工場診断の基本プロセス
    • 経営数値と現場での関連性を理解して、QC手法による現状分析・問題の発見
    • 生産マネジメントを体系的に理解して、IE手法による現状分析・問題の発見
    • 生産戦略策定のための基本フレーム及び生産形態ごとの管理・改善ポイントの理解
    • 製造システム改善の定石を理解した上での、指導・支援・アドバイス
    • 管理システム改善の定石を理解した上での、指導・支援・アドバイス
  • [事例Ⅲ]情報化
    • 経営課題の情報化課題への展開
    • 課題から情報化に関する企画やベンダーに対する提案依頼の作成
  • [事例Ⅳ]財務・会計
    • 基本的な財務評価分析手法と財務改善提案の策定

各項目を見てみると…

2次試験を何度か解いたことのある方は分かると思いますが、多くの項目に「なるほど!」と感じると思います。多少、試験で問いづらいためか含まれない項目や、表現が曖昧で何とも言えない項目もあるものの、与件文に書かれていること、設問で問われていること、思い返してみると多くのものが、ここに挙げられた項目に該当しているのが分かりますね。

つまり、これらが各事例で問われる能力だ、ということなのです。各事例の採点基準にも、 当然これらの項目が反映されているのはまず間違いないでしょう。

以上を踏まえて、次回は、各演習に含まれる単元の内容を基に、各事例の設問について分析していきたいと思います。

続きはこちら→「2次試験で求められる能力とは何か?(3/4)



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